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健康コラム

2018年6月7日

Dr.松岡のなるほど!健康学

「エストロゲン」の減少は、女性の体を改善するタイミング

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では、何歳ごろからが、弱りつつある体の改善に取り組むタイミングなの? ということですが、女性の場合は、ずばり女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量が大きく減少しだす「閉経」の時期。その数年前からが、リセットの大きなチャンスですね。

 

女性が一生のうち分泌する女性ホルモンの量は、わずかにティースプーン1杯ほどなのです。それほど少ない量ながら、女性ホルモンがつかさどる働きは、月経生理や妊娠などに関係する女性専科に限らず、脳や骨、血管、胃腸や皮膚、粘膜などにいたるまで、驚くほど広範囲にわたっています。女性が男性よりも長生きなのも、この女性ホルモンの恩恵によるところが大きいといわれています。

 

それほど重要な働きをする女性ホルモンですが、女性ホルモンの分泌が減少すると、どうなるのでしょうか。
一口に、「女性ホルモン」と言っても、エストロゲンとプロゲステロンの2種類から構成され、そしてエストロゲンは、「エストロン」、「エステリオール」、「エストラジオール」の3種類からなっています。特にエストラジオールの作用はとても強く、エストロンの10倍、エステリオールの100倍もあります。では、これらのエストロゲンが減少するとどうなるのでしょうか? 約50歳ごろ、閉経を境にエストロゲンの減少が大きく進み出します。殊に最も機能の高いエストラジオールの分泌量が同年代の男性と同じくらいとなってしまい、60才になると男性の1/2まで減少してしまいます。なんとエストロゲンの減少が始まる前の約100分の1の値まで、急激にその機能が落ちこんでしまうのです。

 

エストロゲンの減少に伴い、女性ホルモンがつかさどってきた免疫や脂肪の代謝・分解する働きも低下します。閉経を機に、それまでと同じ内容の食事をとっていても、内臓脂肪がどんどん増え、太りやすくなって、わずか1か月で体重が5キロも増えてしまうようなケースも少なくありません。

 

また、女性の閉経の前後10年間ほどの「更年期」といわれる期間は、エストロゲンの減少に伴い精神的にも不安定になりがちで、不定愁訴(ふていしゅうそ:「頭が重い」「イライラする」といった自覚症状を訴えるが、検査をしても原因となる病気が見つからない状態)も起こりやすくなり、身体的には骨粗鬆症のリスクも上がってしまいます。しかし、そうした心身の変化がシグナルとなって、この時期に女性は、「このままじゃまずい!」と気づき、食生活をはじめとするライフスタイル全般を見直して、健康にも気をつけることができるのです。

 

一方男性の方はどうかというと、女性のようにエストロゲンが減少しだすような、目に見えてはっきりとした切り替えの兆候がありません。そのため、とくにサラリーマンなどの場合、定年を迎える60歳から65歳までは、体の変化に気づかず若いときと同じペースのまま、一気に突っ走ってしまう傾向にあるのです。

 

そのまま無事にゴールまで走り切れればラッキーですが、途中で息切れがして、がんに代表されるような大きな病を患ったり、急に病に倒れてしまうような例も珍しくありません。

 

エストロゲンの減少が警鐘を鳴らしてくれる女性に比べ、男性のほうが「健康寿命」が短く、がんにかかる確率もグンと高くなっているのは、こうした背景があるのではないかと思われています。



◆解説してくれた先生

松岡 留美子 先生

松岡 留美子 先生
■略歴
医学博士。日本人類遺伝学会 臨床遺伝指導医、臨床遺伝専門医
1972年横浜市立大学医学部卒業、1978年東京女子医科大学循環器小児科助手
1979年ウィスコンシン大学心臓病理科研究員、1981年ボストン小児病院
(ハーバード大学医学部小児科)循環器科分子細胞生物学部門研究員
2001年東京女子医科大学大学院先端生命医科学研究所講師 同大学循環器小児科講師
2004年同大学遺伝子医療センター講師
2005年同大学国際統合医科学インスティテュート特任教授
2006年同大学大学大学院先端生命医科学研究所特任教授
2008年東邦大学医学部客員教授
2010年若松河田クリニック院長

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